2013年9月の読書

8冊中4冊(半分!)がよしもとばななさんの小説。
ばななさんの小説を立て続けに読むなんて病んでいるなあ。と思っていた9月。10月の今は、綿矢さんの小説を立て続けに読むなんて病んでいるなあ。と思っている。いつでも病んでるんじゃないのww
4冊の中でも「まぼろしハワイ」が特に好きだった。

綿矢さんは、デビュー作「インストール」がすごく苦手だったんだけど、それはたぶん私が若かったせいで(読んだのは高校生か中学生のときだったと思う)今回「ひらいて」を読むと文章がとても美しくて好きになった。いま他の作品も読んでいるところ。

「すーちゃん」シリーズは一瞬で読めるんだけどとにかく癒される。
シリーズを順番に読んでいくつもり。

2013年9月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:1846ページ
ナイス数:50ナイス

■不倫と南米―世界の旅〈3〉 (幻冬舎文庫)
7話の短編集で、すべてがちゃんと「不倫と南米」で、すべてに死があって暗さが漂っていたように思う。見知らぬ土地で、初めて目にする自然や街並み、そこに暮らす人々を見ると、否応なしに命の営みを感じずにはいられないのかもしれない。南米には行ったことがないけど、その感覚は分かる気がした。自分や誰かの死をおそれたり、悲しんだり、死後の世界を思って寂しくなったり、胸が締めつけられたり、そう感じれる人生であること自体が尊いということかと思った。「ハニハチー」と「日時計」が好き。
読了日:9月1日 著者:吉本ばなな

■虹―世界の旅〈4〉 (幻冬舎文庫)
タヒチアンレストランでウエイトレスとして働く瑛子が、休暇で訪れたタヒチで故郷や東京でのこれまでを回想するお話。亡くなった祖母や母に教わった生き方や自分の仕事をタヒチの自然の中で見つめる話かと思いきや、終わり頃の急展開にとっても驚いて、そういうことだったのかと頷く。タヒチの奥深い自然の中で、瑛子がみずみずしく生まれ変わっていた。都会で暮らす人は物事を複雑に考えすぎる。「人生を単純にすることに心をくだいてきた」という瑛子の言葉が心に響く。丁寧に、素直に生きたい。私もタヒチに行って生まれ変わりたい。
読了日:9月2日 著者:吉本ばなな

■すーちゃん (幻冬舎文庫 ま 10-2)
ちょうど仕事で疲れ果てているときだったから、読んで心からほっとした気持ちになった。すーちゃんもまいちゃんも、仕事の帰り道にいつも、疲れた〜って言っている。そんな些細なことが共感できるし安心できる。変わりたいと思って試行錯誤しているすーちゃんが「自分探しってなんだよ。世界にたったひとりしかいない本物の自分を自分が探してどうすんの。それじゃあ自分がかわいそうだよ。」って気づいて、わーって泣くところが好き。自分を変えるんじゃなくて、新しい私を増やしていくって思うと心が軽くなる。
読了日:9月7日 著者:益田ミリ

■もしもし下北沢 (幻冬舎文庫)
父親が知らない女と心中して1年、引っ越した先の下北沢で娘と母がゆっくりと立ち直ってゆくお話。私は血の繋がった人を失うという経験がないからか、ついていけない部分が多かった。でも分からないなりに、生きている世界の優しさや大きさ、命の輝きを感じるようだった。お父さんだけじゃなくて、お母さんも、自分も、街で生活している人たちも、街のお店や建物も、みんないつかは時間に奪われて消えてしまうけど、頭の中や細胞、瞳の中、街の積み重ねの中にいつまでも残っている。「ざまあみろ時間よ。」そんな風に思えるのはいいなと思う。
読了日:9月10日 著者:よしもとばなな

まぼろしハワイ (幻冬舎文庫)
「ハワイ」と「普通とちょっと違う家族」にまつわる短編三作。家族って、血の繋がりがあるから家族なのではなくて、血の繋がりがあってもなくても、「家族になっていく」もの。日常のつまらないことの積み重ねだけが家族をつくっていくのだから、心を開ける人とは誰とでも家族になれる。そう言い放つハワイ育ちのあざみさんが眩しかった。夫婦だって他人が家族になっていくもの。あとがきの、「人生には限りがあって、いつまでもいっしょにいられない。だからせめていっしょにいるあいだ、みんなで花でありたいです。」という言葉が胸に沁みた。
読了日:9月17日 著者:よしもとばなな

高慢と偏見、そして殺人〔ハヤカワ・ミステリ1865〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
J.オースティンの「高慢と偏見」の6年後の世界を舞台に描かれるミステリー。すごく楽しかった。ミステリーとしては殺人事件の意外な真相や繋がりがおもしろかったし、何より19世紀のイギリスの司法制度が事細かに描かれていて興味深かった。緊迫した裁判の様子が思い浮かんでくるほど。それと、登場人物の人柄をはじめ原作の世界観が見事に保たれていて、著者が原作を大切にしているのが伝わってくるようだった。続編といっていいくらい、そこにいる人たちが紛れもなく「高慢と偏見」の彼らや彼女たちであるように感じた。
読了日:9月24日 著者:P・D・ジェイムズ

■ひらいて
たとえに恋した愛の痛々しさが凄い。どうして人を愛すると、その人の全て、その人の愛する相手まで知り尽くして全てを自分のものにしたくなるのだろう。美雪のように、心をひらいて何の期待もせずに相手をそのまま受け入れない限り、他者への愛と自己愛は同じものになってしまうのかも。「”何も心配することはない。あなたは生きているだけで美しい。“と丁寧に言い聞かせてくれる存在を渇望し、信じきりたいと望んでいる。自分も誰かのそんな存在になりたい。」いつか愛がひらいて愛せますように。そう願わずにはいられない美しい最後だった。
読了日:9月25日 著者:綿矢りさ

紙婚式 (角川文庫)
結婚生活についての8編。どれも結婚後に「ズレ」が生じている夫婦の話。突然崖の上から突き落とされるような、背筋の凍るような話がほとんど。だからその中でもわずかな希望を感じる「秋茄子」がいちばん好きだった。恐いけど、どれもありえそうなことだと思う。「夫は既に私の一部である。他人ではないので会っても淋しさは紛れない。淋しさを紛らわしてくれるのは他人であることを私は知った。」お互いを尊重するという意味で他人でいることが大切なのかも。大変だけどいいなと思うのは、結婚生活も生きることも同じ。
読了日:9月28日 著者:山本文緒

読書メーター
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