2013年5月分

5月は小説7冊ビジ書1冊まんが1冊の合計9冊。

読みながらとても心が苦しくなる本が後半に続いた。
その中でも「しろいろの街の、その骨の体温の」は本当に苦しかった。同じくスクールカーストを扱っている「桐島、部活やめるってよ」がかわいいものに思えてくる。でも苦しいだけでなく、美しいラストが素晴らしいんだよね。ちなみにこの本は今年の三島賞受賞作品で、受賞の際に雨宮さんのツイートで私は初めてこの本とその賞の存在を知った。

それから「恋愛中毒」を読んで、山本文緒ブームが到来。きっかけが、とにかく不倫の本を読もうというところから始まったんだけど、ただの不倫話ではなくてとてもおもしろかった。自分がこういう恋愛小説を読むようになるなんて今まで思ってもいなかった。人生何が起こるか分からないものだね(大袈裟に)。

2013年5月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:2425ページ
ナイス数:84ナイス

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)
高校2年生の秋。高校独特の階級社会と、桐島が部活をやめたことで生じたわずかな変化を5人の同級生の視点で描いている。映画がとてもよかったので手に取った。映画と本は比べるものではないけれど、映画の方が設定からして完成度が高くて面白かったなと思った。でも逆に言えば、より現実に近いのは小説の方かな。自分の高校時代と重なった。作者はきっと「上」の人だったんじゃないかなとなんとなく思った。宮部実果の話が良かった。
読了日:5月2日 著者:朝井 リョウ

■三匹のおっさん (文春文庫)
三匹のおっさん。おっさん!?おっさんかぁ…。と、気乗りせず長い間積読になっていたけど、意を決して読んでみると意外というかやはりというか、おもしろかった。それは、単なる定年を迎えたけどじじいと呼ばれたくはないおっさん3人が活躍する話にとどまらず、妻や子ども世代、孫世代の視点が描かれていたからだと思う。おまけのページで、私も第三話がいちばん好きです児玉さん!と言いたくなった。シゲ・登美子夫妻も、キヨ・芳江夫妻も、すてきな夫婦で。憧れる。
読了日:5月15日 著者:有川 浩

カフーを待ちわびて (宝島社文庫)
カフーとは沖縄の方言で、「良い知らせ」「幸せ」という意味。読了後、このタイトルの意味するところがじんわり心に広がって、あたたかい気持ちになった。沖縄の孤島の風土に憧れは抱けなかったし、ヘタレな明青に苛立ったけど、幸の魅力と孤独に惹かれた。幸の最後の告白は涙なしには読めなかった。ひとつずつ失っていって独りぼっちになった明青と幸。きっとふたりは一緒になって、その様子をお母さんもおばあも喜んでくれる。ふたりが待ちわびていた幸せな未来を予感できるいい終わり方だった。映画を見てみたい。
読了日:5月16日 著者:原田 マハ

アルゼンチンババア (幻冬舎文庫)
母の死後に始まった、父とアルゼンチンババアとみつこの短いお話。短いし淡々としているんだけど、味わい深い。大切な人の死を迎えて初めて、人は心から恐怖や暗黒や歓びや尊さを知るのかもしれない。それがみつこの言う、母の死に立ち会うことでもらった大きな贈り物なんだろう。「好きなひとがいつまでも、死なないで、いつまでも今日が続いていてほしい」こんな叶いもしない儚い祈りを抱く人間は滑稽でちっぽけ。だけど、美しい。
読了日:5月19日 著者:よしもと ばなな

■しろいろの街の、その骨の体温の
所々で読む手を止めなければ息苦しくて読み進められなかった。小学3年生から中学2年生にかけての女子のクラス内カースト。その中で下から2番目のグループに属する結佳が抱える恋愛感情、欲望、自意識が生々しくて、あの頃、文章にはできていなくて漠然と、でもたしかに感じていた苦々しいものが迫ってきた。ニュータウンの開発過程と、彼女の身体と心の成長を重ねる描き方が本当に巧い。そして、ラストの解放が美しくて泣ける。大人になっても、自分の価値観を表現できていない人はたくさんいると思う。
読了日:5月21日 著者:村田沙耶香

君に届け 18 (マーガレットコミックス)
爽子は天然で風早くんを振りまわしてる。そして振りまわされる風早くんがかわいい。女子会もクリスマスも楽しそう。みんな落ち着くところに落ち着いた感じ。
読了日:5月25日 著者:椎名 軽穂

■SLY
元恋人がHIVポジティブと診断されたことをきっかけに、女1人男2人でエジプトを旅することに。死を身近に感じはじめた3人が、死後の世界を信じた古代エジプトの人々の思想や遺した物に触れることで生まれる感情の描写が繊細でとてもきれい。実際にばななさんがエジプトを旅しただけあって、エジプトの様子とそこから感じるものが深くてリアルで、ばななさんの豊かな感受性と想像力にため息がでる。いつかエジプトに行きたいと強く思わされた。
読了日:5月27日 著者:吉本 ばなな

■上昇思考幸せを感じるために大切なこと
上昇思考と感謝の心を軸に、幸せを感じるために大切なことが語られていて、長友選手の前向きなパワーが隅々から溢れ出ている。「生きている間に生まれたときよりも美しい心を育むこと。それが僕たちの生きている意味だ。世のため、人のためを常に考え、生きることが最も美しい生き方だ」こんなことを誰に見せるでもない自分のための心のノートに書き留めるほど、まっすぐで誠実で熱い人柄に学ぶことは多かった。どちらかというと日本男児の方が読みやすくて好きだけどとても良い本だった。
読了日:5月27日 著者:長友 佑都

■恋愛中毒 (角川文庫)
すごい。一気に読んでしまった。単なる不倫話かと思っていたら大間違い。林真理子の解説にあるとおり、水無月の心理描写や登場人物のキャラクター、何より構成が巧くて本当に惹きつけられた。水無月が創路の愛人となった当初は冷静だったのに、少しずつ壊れていって中毒に陥り、やがてまた同じ過ちを繰り返してしまう。水無月の思考や行動は恐ろしいし異常だと思うけど、分かってしまう想いもある。「どうしてなの?いつから私のことを嫌いになったの?」「どうすればよかったの?」胸が締め付けられるようだった。
読了日:5月30日 著者:山本 文緒

読書メーター
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