2012年10月分

今月はそこそこ読めたかな。
今まで読んだしをんさんの作品は、ポラリスは除いて、おもしろエッセイ、感動青春小説っていうイメージだったのだけど、私が語りはじめた〜でイメージが一新。でもしをんさんぽい。黒も黒、真っ黒。でもそういうの大好き。伊坂さんは単行本に突入したこともあってしばらくお休みしてしをんさんを読み進めたいと思います。それと、その伊坂さんについては今回読んだモダンタイムスが一番好きになった。

2012年10月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:2138ページ
ナイス数:62ナイス


■モダンタイムス(上) (講談社文庫)
「魔王」がすごく好きだったので、続編である本書を楽しみにして読んだ。期待は裏切られず。ものすごく大きくて怪物的な何かに良心が奪われ、分業をこなしている人たち。その大きな何かが分からなくて読んでいくうちに恐怖が大きくなってゆく。でも井坂好太郎なる人物が出てくるたびにクスッと笑ってしまいそうになるんだよね。
読了日:10月4日 著者:伊坂 幸太郎


■モダンタイムス(下) (講談社文庫)
面白かった。「そういうことになっている」システムの中で、人間の人生や仕事や事件は国家が存続しようと動く流れの一部でしかない。なんとも恐ろしい価値観で、それこそ果てしない虚無感に襲われる。けれど、「人間は大きな目的のために生きているんじゃない。小さな目的のために生きている」し、「人生は要約できない」のだという考えに救われた。システムの姿や目的、大きな流れを見て見ぬふりはしても、目の前のめくれたスカートを直せる人でありたいなと思った。
読了日:10月6日 著者:伊坂 幸太郎


■日本男児
感動。涙なしでは読めなかった。長友選手といえば「世界一のサイドバックになる」という広大な夢を堂々と述べて、この人ならその夢を実現させそうだと思わされる人。その長友選手が今までどのように努力し考えステップアップしてきたのかよく分かる本。努力する才能がなければ成長はできない。努力する才能とは、努力することを躊躇わない勇気。自らの可能性を切り開くのは限りない求道心だと教えてもらった。それでいて、家族や周りの人を尊敬し大切に思い、感謝の気持ちを忘れないのだから本当に謙虚。世界一のサイドバックになる夢を叶えてほしい
読了日:10月11日 著者:長友佑都


■30代にしておきたい17のこと (だいわ文庫)
20代だけど30代の予習をしてみたいと思って読んだ。20代のとはいえアラサーだからか、著者の20代向けの本より共感できた。ただ抽象的な話になると、経験の浅さからか途端に実感として理解が難しかった。自分にとっての幸せが何なのかは日々考えていきたいと思った。これから訪れるであろう人生における辛いこと、悲しいことに目が向きがちな最近だったから、「人生の醍醐味はすべてを味わい尽くすことにある」というあとがきの言葉に最も目頭が熱くなった。
読了日:10月11日 著者:本田 健


■もの食う人びと (角川文庫)
もの食う人々を通して見た世界が描かれている本書。歴史的背景や世界情勢など知らないことが多くて、私にはどれも新鮮で興味深かったけれどとても難しかった。説明が少なく断片的で旅の全体像が見えてこないことに違和感を抱きつつ時間をかけながらやっと読了。その書き方こそが「国家単位でものを発想してはならない」し「細部!細部!細部こそが大事」であることを物語っているのだと思った。歴史がどうあれ情勢がどうあれ、ものを食べて生きている人がそこにいるのだと。でも大部分が遠い世界の出来事としか思えていないのが正直なところ。
読了日:10月20日 著者:辺見 庸


■私が語りはじめた彼は (新潮文庫)
文章が本当に美しい。その美しさに何度ため息をついたことか。そこに出てくる人や情景を美しいと感じることはあっても文章そのものをそう感じることはあまり多くなく、その美しさに感動しながら読んだ。回りくどく表現しているだけとも言えるけど、その回りくどさに小説の良さがある気がした。村川に振り回される人たちをさまざまな視点で描いていて、事実はひとつだけれど真実は人の数だけあるように、心の痛みとの付き合い方も人の数だけあるものなのかと思った。「冷血」が一番好き。
読了日:10月25日 著者:三浦 しをん


■20代にしておきたい17のこと <恋愛編> (だいわ文庫)
良書。分かりやすくも難しくもあった。わりと傷をえぐられた代わりに自分で気づいていないことに気づかせてもらった。そのひとつがギブアンドテイクが当たり前と思っていたこと。「自由に与えて自由に受けとる世界」があることやその世界の豊かさには衝撃を受けた。「今回の人生でどう生きたいのか。与える人か、何もしない人か、奪う人か。恋愛を与えるためのトレーニングだと思える人は、恋愛だけでなく人生そのものも深まっていくでしょう」。漠然とした恐れを具体化して、リスクとリターンを理解することは一歩踏み出せるよう背中を押してくれる
読了日:10月29日 著者:本田 健